財務諸表ケース【問題】 2026-10-03

財務諸表ケース|PL・BS・CFから企業の財務状態と経営課題を読み解く 財務・会計

財務諸表ケース【問題】 2026-10-03

今回のテーマ
赤字のアフターサービス事業は、やめるべきか
― サービス継続/廃止 × 顧客基盤 × 技能承継 × 将来販売

以下は学習用の架空ケースです。

明光産業システム株式会社は、工場向け自動化設備と検査装置を設計・販売しています。直近年度は売上高245億円、営業利益19億円、営業CF22億円、現預金43億円、有利子負債31億円。2年後には新型製品の量産設備へ12億円程度の投資を検討しています。

一方、アフターサービス部門は売上高13.5億円に対し、部品費・外注費・出張費・サービス人件費等が13.0億円、部門固定費等が2.8億円で、部門営業損益は▲2.3億円です。3年前はほぼ収支均衡でしたが、旧型機種の故障増加、部品価格上昇、遠隔地対応増加で採算が悪化しました。

経理部門からは「年間2億円超の赤字が続くなら段階的に縮小し、外部会社へ移管する」案が出ています。

ただし、数字には十分表れていない事実があります。

現在の保守契約先は約460社。過去3年間の新規設備売上の約42%は、既存の保守契約先からの更新・増設・別ライン追加導入でした。保守契約更新率は91%です。

18か月後に発売予定の次世代検査装置では、試作評価に協力する12社のうち8社が現在の保守契約先です。

また、昨年度の製品改善42件のうち15件は、サービスエンジニアが顧客現場で発見した故障傾向や操作上の課題をきっかけにしています。サービス部門は修理だけでなく、顧客の不満、競合への切替兆候、増設計画、実使用上の故障パターンを把握する接点にもなっています。

一方、継続にもリスクがあります。サービスエンジニア38名のうち6名は58歳以上。旧型機種の高度修理は4名のベテランへの依存が大きく、技能習得には概ね18か月かかります。一部旧型機種では電子部品の生産終了も始まり、今後3年間で部品調達コストがさらに上昇する可能性があります。

品質保証部門は「対応可能と言い続けた結果、必要部品が入手できず復旧できない方が顧客との信頼を損なう」と指摘しています。

外部保守会社は現在作業の約60%を受託可能で、年間コストを約0.9億円削減できる可能性があります。ただし、標準対応時間は24時間以内から48時間以内へ延び、高度なカスタム機種は対象外。顧客との直接接点の多くも外部会社へ移ります。

主要顧客の一部との基本契約には、24時間以内の一次対応や一定期間の部品供給努力義務があり、変更には個別協議が必要です。

撤退ではなく、サービス再設計案もあります。
・保守料金を平均15%程度見直す
・24時間対応向けに上位プランを設定
・旧型機種は対応期限を明示
・定型作業を外部委託し、高度修理と顧客対応を自社に残す
・遠隔監視・遠隔診断へ1.2億円投資
・若手技術者の技能承継へ0.6億円投資

ただし、価格改定による契約更新率低下や、遠隔監視投資の効果には不確実性があります。

当事者の見方も異なります。
経理・財務は赤字削減と12億円投資余力の確保を重視。営業は更新・増設案件の入口喪失を懸念。開発は現場情報の価値を重視。サービス部門は高齢化と技能承継遅れを課題視。顧客は価格だけでなく復旧速度・部品供給・技術力を重視しています。

ここで考えてみましょう

問1
アフターサービス部門は年間2.3億円の赤字ですが、この数字だけを根拠に縮小・撤退を判断してよいでしょうか。会社全体の3〜5年後の価値を考えるうえで、どの財務数値と、どの「数字にまだ表れていない事実」を追加で確認する必要があるでしょうか。

問2
「全面撤退」「料金改定して継続」「一部外注+中核機能を内製」「遠隔対応・技能承継へ追加投資」などの選択肢があります。顧客関係、新規設備販売、技能承継、契約上の制約、将来のCash、新型製品への投資余力まで含めると、どのような条件を置いて判断すべきでしょうか。

※今日は問題編です。結論は明日の解答編で整理します。

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