財務諸表ケース【問題】 2026-08-22
M&Aで売上も利益も拡大。では、この成長は「良い成長」でしょうか?
今回は、企業買収によって業績が大きく伸びた会社のケースです。
PLだけを見ると順調に見えますが、BS・CF・KPIまでつなげると、確認したい論点が増えてきます。
※以下は学習用の架空ケースです。金額単位は百万円です。
ケース
B社は法人向けITサービスを提供しています。
既存事業は安定していましたが、成長スピードを高めるため、2026年度の期首に同業のC社を買収しました。
買収価格は 3,600百万円。そのうち 2,400百万円を新規借入、残りは手元資金で支払っています。
経営陣は、C社の顧客基盤とB社のサービスを組み合わせることで、クロスセルと収益性向上を見込んでいます。
1年が経過し、決算は次のようになりました。
1. PL(損益計算書)
| 項目 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,000 | 13,200 |
| 売上総利益 | 4,000 | 5,150 |
| 販管費 | 3,000 | 3,950 |
| 営業利益 | 1,000 | 1,200 |
| 支払利息 | 80 | 230 |
| 税引前利益 | 920 | 970 |
| 当期純利益 | 650 | 670 |
売上高は 32%増、営業利益も 20%増 です。
一方、営業利益率は 10.0% → 9.1% に低下しています。
2. BS(貸借対照表)
| 項目 | 2025年度末 | 2026年度末 |
|---|---|---|
| 現預金 | 1,800 | 1,050 |
| 売上債権 | 1,700 | 2,250 |
| その他流動資産 | 500 | 600 |
| 有形固定資産 | 2,200 | 2,350 |
| のれん・無形資産 | 300 | 3,050 |
| 総資産 | 6,500 | 9,300 |
| 有利子負債 | 1,600 | 4,000 |
| その他負債 | 1,700 | 2,000 |
| 純資産 | 3,200 | 3,300 |
自己資本比率は 49.2% → 35.5% に低下しました。
有利子負債は 1,600 → 4,000百万円 に増加しています。
3. CF(キャッシュ・フロー計算書)
| 項目 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 営業CF | +900 | +1,050 |
| 投資CF | ▲450 | ▲3,750 |
| 財務CF | ▲200 | +1,950 |
| 現金増減 | +250 | ▲750 |
2026年度の投資CFには、C社買収に伴う支出が含まれています。
営業CFそのものは前年より増えています。
4. KPI・補足情報
| KPI | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 既存事業の売上成長率 | +8% | +3% |
| 買収したC社の売上寄与 | ― | 2,900 |
| 営業利益率 | 10.0% | 9.1% |
| ROIC | 11.5% | 8.2% |
| 売上債権回転日数 | 62日 | 68日 |
| 従業員数 | 420人 | 590人 |
また、買収時には「3年以内に年間400百万円のシナジー効果を実現する」という計画を立てていました。
ただし、1年目の時点では、シナジー効果を個別に測定する社内KPIはまだ整備されていません。
ここで考えてみましょう
問1
売上高と営業利益は大きく増えています。
この決算だけを見て「M&Aは成功しており、会社の収益力も改善した」と評価してよいでしょうか。
PL・BS・CF・KPIのどこをつなげて確認するか考えてみてください。
問2
今後、この買収が本当に企業価値向上につながっているかを判断するために、
追加でどのような数字・KPI・情報を確認したいでしょうか。
「売上が増えたか」以外の視点から考えてみてください。
今日はここまでです。
答えは明日の「財務諸表ケース【解答】 2026-08-23」で、PL → BS → CF → KPIの順に整理します。

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