題材名:ベーカリー「麦の灯」の駅前店は残すべきか
ケースID:FIN-2026-10-17-MUGI
翌日解答編の参照日:2026-10-18
主要論点:店舗別採算と共通費配賦/撤退後に残る費用/設備更新と資金繰り/職人・顧客の引継ぎ/既存借入を含む返済能力/金融機関への説明
※学習用の架空事例です。金額は百万円。端数処理を除き、数値は本ケースの仮定です。本編には結論・解答を記載していません。
1.背景
地方都市のベーカリー「麦の灯」は、製造拠点を兼ねる本店と駅前店を運営している。社長は54歳、従業員は正社員8人とパート12人。2026年9月期は増収黒字だったが、現預金は減った。
駅前店は開業8年。2026年11月末までに、2027年1月からの賃貸契約更新を判断する必要がある。更新すれば賃料・人件費などで年間現金固定費が3増える。さらにオーブンの更新時期が重なり、社長は「駅前店を閉じて本店に集中するか、設備を入れ替えて続けるか」で迷っている。
2.財務状況
【損益計算書】
項目:2025年9月期 → 2026年9月期
売上高:180 → 196
変動費:90 → 100
限界利益:90 → 96
現金固定費:80 → 84
減価償却費:6 → 6
営業利益:4 → 6
支払利息:1 → 1
税引前利益:3 → 5
法人税等:1 → 1
当期純利益:2 → 4
変動費は材料・包装・販売手数料等。現金固定費は給与・賃料等で、減価償却費と支払利息を含まない。他の営業外損益・特別損益はない。
【貸借対照表】
項目:2025年9月末 → 2026年9月末
現預金:20 → 16
売掛金:12 → 14
棚卸資産:6 → 7
その他流動資産:4 → 4
固定資産(簿価):58 → 60
資産合計:100 → 101
買掛金:10 → 11
その他流動負債:10 → 10
短期借入金:10 → 13
長期借入金:40 → 33
純資産:30 → 34
負債・純資産合計:100 → 101
長期借入金は1年以内返済分も含めた管理上の表示である。配当・増資・資産売却はない。
【2026年9月期の現預金増減】
期首20+純利益4+減価償却6-売掛金増2-棚卸資産増1+買掛金増1-設備取得8+短期借入純増3-長期借入元金返済7=期末16。
その他の資産・負債の増減や資金移動はない。税金・利息は上記損益と同額を支払った。
【2026年9月期の店舗別採算】
項目:本店/駅前店/本部共通/合計
売上高:120/76/0/196
変動費:56/44/0/100
限界利益:64/32/0/96
現金固定費:42/30/12/84
減価償却費:4/2/0/6
共通費配賦前の営業利益:18/0/▲12/6
管理会計では本部共通費12を本店8、駅前店4に配賦しており、配賦後の営業利益は本店10、駅前店▲4となる。本部共通費は社長・経理担当の人件費、システム費等である。
3.継続・撤退を検討するための条件
【継続する場合】
・2027年1月にオーブンを12で取得し、即時支払う。新規借入9と自己資金3を想定。銀行審査は未了。
・新規借入は5年間の年元金均等返済、年利3%。初年度も12か月分の元金を返済し、利息は期首元金に対する年額で概算する。
・新オーブンの年間償却費は3。駅前店の現行年間償却費2は、旧オーブンが2026年12月末で償却を終えるため、新年度の比較用年間計画では3に置き換える。旧オーブンの処分収支はゼロとする。
・新設備による年間の電力・修理費削減は1.5を見込む。年間現金固定費の増加3とは別に計算する。
・店長は価格改定と法人向け販売で駅前店売上を76から82に伸ばせると考えている。売上増分の変動費率は60%を見込むが、法人との契約は未締結。既存売上76の変動費は44のままとする。
【撤退する場合】
・2026年12月末閉店を想定。原状回復・解約・人員対応等の一時支出は合計9、2027年1月に支払う。敷金の返還2は同年4月予定で、その他流動資産4に含まれる。
・駅前店の現金固定費30のうち、年間24は閉店により削減できる。残る6は本店へ異動する職人2人の給与等で、少なくとも1年間は残る。本部共通費12は変わらない。
・駅前店売上のうち年間18が本店へ移ると社長は見込む。移行売上の変動費率は60%、本店では配送・シフト調整等の現金固定費が年間3増える。売上移行額には顧客調査の裏付けがない。
・撤退時の資産除却等の会計損失は未見積もり。一時支出9と別に、会計処理と現金支出の区別を確認する必要がある。
【共通の資金条件】
・既存長期借入の今後12か月の元金返済は7、既存借入全体の年間支払利息は1を見込む。短期借入13は2027年9月に更新審査がある。追加の未使用融資枠はない。
・本店の維持更新投資が2027年4月に4必要で、どちらの選択でも発生する。
・資金担当者は、給与・材料代等に備え最低現預金10を維持したいという。月次資金繰り表は未作成。
・2026年10〜12月の投資・借入元金返済を除く営業資金収支は、各月プラス1の見込み。既存元金返済は毎月7÷12。2027年1月以降の月別営業収支、税額、運転資金増減は未見積もりで、年末年始に販売の季節性がある。
・年間採算の比較では、まず2026年実績を基準とした12か月の平常稼働ベースで検討する。実際の初年度資金繰りでは更新・閉店時期と入出金日を別途反映する。将来税額を単純に実績1で固定しない。
4.非財務の状況
駅前店は通勤客との接点であり、本店に来られない高齢顧客もいる。本店への移行には距離や営業時間の壁がある。一方、本店は週末の売切れが多いが、平日午後には製造余力がある。
駅前店の職人2人は発酵管理と若手指導を担う。本店へ異動すれば後継者育成に役立つ可能性があるが、本店の作業場所は狭く、店長間で役割を調整できていない。パート従業員の多くは本店勤務を希望していない。
金融機関からは「黒字なのに現金が減った理由」「閉店でどの支出が消えるか」「設備更新後に既存分も含めて返済できるか」を説明してほしいと言われている。
5.判断に迷う論点
配賦後赤字の駅前店を閉じれば、会社全体の利益と現金はどのように動くのか。継続に必要な設備更新は、売上増が実現しない場合でも成り立つのか。職人の技能や顧客接点を残す価値を、資金の制約とどう結び付けて判断するか。
6.問い(2問)
問1:2026年9月期に「黒字でも現預金が減った理由」を説明したうえで、継続案と撤退案の年間採算・返済原資・当面の資金繰りを比較してください。継続案は売上76据置と82達成、撤退案は本店への売上移行18と移行ゼロを少なくとも検討し、会計利益、一時支出、元金返済を区別してください。現時点の情報で計算できる範囲と、判断できない範囲も示してください。
問2:経営者ならどの選択肢を、どの条件・期限・撤退基準のもとで進めますか。人材・顧客・製造体制への対応と、金融機関へ説明する計画・必要資金・下振れ時の対応を整理してください。二者択一に限らず、規模縮小や条件交渉を挙げる場合は、実行可能性と確認事項を示してください。
7.追加で確認すべき情報
・店舗別の月次売上、時間帯別客数、商品別粗利、値上げ後の客離れ、法人受注の確度と回収条件。
・本店への顧客移行意向、曜日別の製造・売場能力、配送費、廃棄率、残業の増減。
・職人とパートの意向、技能継承計画、異動後の役割、必要な採用・教育費。
・賃貸借契約の解約条件、原状回復見積もり、敷金返還の確実性、設備延命や中古・リースの条件。
・撤退で消える費用と残る費用の契約別明細、除却損・税金・退職関連支出の扱い。
・全借入の月別返済表、担保・保証・財務条件、更新審査の条件、新規融資の実行可能日。
・週次または月次の入出金予定、納税・賞与・季節資金、運転資金の増減、最低現金10の根拠。
翌日解答編への引継ぎ:題材名「ベーカリー『麦の灯』の駅前店は残すべきか」、ケースID FIN-2026-10-17-MUGIを使用し、本文の数値と条件を共通前提にしてください。未確認事項は事実として補わず、仮定を明示して検討してください。


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