財務諸表ケース【解答】 2026-10-25

財務諸表ケース|PL・BS・CFから企業の財務状態と経営課題を読み解く 財務・会計

財務諸表ケース【解答】 2026-10-25

題材:北辰設備サービスの事業承継――株式代金と会社の資金繰りは両立するか
ケースID:FIN-2026-10-24-HOKUSHIN
対応問題編:財務諸表ケース【問題】 2026-10-24

前日の問題編をGmailで確認し、同じ題材・数値・問い2問に解答します。補完ケースではありません。学習用の架空事例で、金額はすべて百万円です。配当手取り80%や税金支払4などはケース内の仮定です。以下の実行条件・期限・代替案は解答としての提案であり、合意済みの事実ではありません。

【結論】
承継の方向性は維持しつつ、「2027年1月に株価36を全額一括決済し、個人借入30を会社配当で返す」原案は、そのまま実行しない。株価・支払時期・個人借入条件を組み直し、会社の季節資金、主要顧客の更新、人材と権限の移管を先に確認する。条件が揃わなければ株式決済を延期する。

会社の利益や現金30は、後継者が自由に使える個人資金ではない。年間の会社資金余剰は承継費用反映後でも1.5にとどまる一方、原案の個人返済を賄う会社配当は6.75必要となる。初年度だけ手元資金を取り崩せても、継続的な返済設計としての裏付けが足りない。

【問1:財務面の判断と計算】

1.2026年実績の確認
営業資金=純利益12+償却8-売掛金増4-仕掛・部材増2+買掛金増2=16。
現金増減=16-設備取得8-元金返済4=4。現金26から30への増加と一致する。

2027年の基準計画では通常運転資金の期末残高は前年と同じなので、2026年の運転資金増4をそのまま再計上しない。一方、元金返済は4から12へ増える。

2.①基準計画での年間資金余剰(配当前)
純利益12+償却8-通常運転資金純増0-維持更新投資8-元金返済12=0。
営業資金は20だが、投資と元金返済で全額使う。利息2と税金4は純利益に織り込み済みであり、二重に控除しない。

3.②承継による費用変更を反映した年間資金余剰
従来の社長報酬12に対し、今期の関連支出は社長報酬3+顧問料3+追加人件費4.5=10.5。
現金費用の減少は1.5であり、12全額が浮くわけではない。
営業利益=18+1.5=19.5。
税引前利益=19.5-利息2=17.5。
税金支払・税金費用を比較上4と置いた純利益=13.5。
年間資金余剰=13.5+償却8-維持更新投資8-元金返済12=1.5。

この計算は採用と引継ぎが予定どおり実現し、売上・粗利・他の費用が不変であることを前提とする。採用紹介料、教育負担、引継ぎの延長費用等は金額未提示のため加えていない。
税金4据置きも比較のための仮定であり、実際の税額、納付月、費用の税務上の取扱いを反映しない。参考感応度として、増益1.5にケース実績の税負担率25%を単純適用すると増税は0.375、余剰は1.125となる。ただし25%は実効税率の確定値ではなく、この数字で実行判断しない。翌期以降も報酬停止・顧問契約終了・人件費の通年化を再計算し、今期1.5を恒久値としない。

4.③個人返済に必要な会社配当
個人の初年度元利金=元金30÷5年+利息0.9=6.9。
既存報酬からの返済充当1.5を差し引くと、配当手取りで必要なのは5.4。
会社の年間配当支払額=5.4÷80%=6.75。
会社資金余剰との差=6.75-1.5=5.25。原案では、通常運転資金が年末に元に戻っても、会社現金は年間5.25減る。
期首現金30を起点にした期末現金は、他の変動がなければ30+1.5-6.75=24.75。

配当は費用ではなく税引後資金の流出である。会社と個人の計算は別々に作り、会社の配当支払額と個人の配当手取りをつなぐ。

5.現金30・季節資金10・最低現金15から見た配当余力
静的な備えの見方では、30-季節資金10-最低現金15=5。
これは期首現金のうち、他の月次収支を無視したときに残る余白であり、配当可能額の確定値ではない。原案の配当6.75は、この余白を1.75上回る。

年間余剰1.5を季節ピーク前に全額確保できたと仮定しても、余白は5+1.5=6.5であり、6.75には0.25届かない。しかし、0.25を実際の資金不足額・必要融資額と断定してはいけない。年間余剰の発生月、配当月、季節資金の回収月が未確定だからである。

たとえば、他の収支がまだ発生しない段階で配当6.75と季節資金10が先行すれば、30-6.75-10=13.25となる。一方、配当が季節資金回収後なら経路は異なる。13.25は条件を置いた例示であり、予測最低残高ではない。期末24.75だけを見て常時15を確保できるともいえない。

さらに、短期借入12の更新が2027年2月に控える。基準計算は更新され純増減ゼロである前提だが、不更新時には別の資金流出が発生する。未承認枠は手元資金に含めない。年間配当額の検討と、実際に配当できる時期・法的条件の検証は両方必要である。

【問2:条件変更を軸にした実行判断】

1.株式代金の支払設計
株価36の算定根拠と、売掛金・仕掛工事・設備・簿外債務の実態を検証する。純資産50だけで割安と判断せず、社長退任後の収益力、顧客集中、人材依存を価格交渉へ反映する。

「決済時24+残額12を年4ずつ」の案は、初回借入を減らす効果がある一方、売主への支払が銀行返済に重なる。例として自己資金6、初回個人借入18、銀行借入は原案と同じ年利相当3%・5年元金均等、売主分割に利息なし、初年度に年4を支払うと仮定する。
銀行への支払=3.6+0.54=4.14。
売主への4を加えると個人支払は8.14。
必要会社配当=(8.14-報酬充当1.5)÷0.8=8.3。
原案の6.75より増える。この条件は未合意の比較例であり、分割払いだけで解決するとはいえない。

価格引下げ、返済期間延長、売主支払の据置きや銀行返済との時期調整、自己資金の追加等を組み合わせ、少なくとも銀行借入完済・売主分割完了まで年別に試算する。据置き後の一括支払も含める。追加自己資金を使う場合も個人の生活予備資金を残す。段階的な株式移転を検討するなら、議決権、経営権、残株の価格と移転条件も決める。

会社が毎年1.5を配当できると仮置きしても、個人の返済財源は報酬1.5+配当手取り1.2=2.7にとどまり、原案の6.9に届かない。しかも1.5の全額配当は会社の追加蓄積を残さない。返済額から配当を逆算するだけでなく、会社が守る現金と必要投資から支払上限を決める。

2.非財務面の判断
保守契約45%は継続性の手掛かりになるが、更新と粗利が確定した収益ではない。最大顧客18%は年売上54に相当する。仮に全社平均粗利率30%で単純計算すれば粗利影響は16.2だが、実際には顧客別粗利と回避可能費用を調べる必要がある。社長から専務への紹介、顧客面談、更新条件の確認を決済前に進める。

追加人件費4.5は候補者未定の計画である。採用できず支出が減っても、それを配当余力とみなさない。工事管理、品質、受注対応に空白が出て売上や回収が悪化し得る。現場責任者2人の継続意思、61歳責任者の技能移管先、若手4人の育成時間を確認する。

社長の週2日・9か月の引継ぎは、顧客紹介件数、見積承認基準、緊急対応、専務の決裁権限、完了判定を文書化する。契約・資格・許認可についても、代表者変更による必要手続と事業継続条件を確認する。

3.利害関係者別の見方と提示資料
・退任社長:早期の老後資金確保と会社・顧客の存続が関心。株価根拠、一括/分割の手取り時期、売主側の回収リスク、引継ぎの範囲・報酬を提示する。
・専務:経営権を持つ意義と個人の返済負担を両方評価する。家計・予備資金を含む個人資金繰り、借入と売主支払の全期間返済表、配当ゼロ時の対応を提示する。
・会社の銀行:既存借入返済と運転資金の維持が関心。承継後12か月の月次資金繰り、既存返済表、短期借入更新計画、配当方針、顧客・人材移管計画を提示する。
・個人融資の銀行:返済源である報酬と配当の持続性が関心。会社の配当余力と支払時期、個人の家計、株式評価、売主分割を含む総債務・担保等を提示する。
・従業員・顧客・仕入先:給与、品質、緊急対応、支払継続が関心。新体制の責任者、連絡先、教育・引継ぎ日程を説明し、必要な同意・更新の進捗を確認する。

4.実行までの順序と条件未達時の対応
提案として、2026年11月末までに株価検証、顧客面談、採用・代替体制、会社と個人の資金計画を揃える。2027年1月の決済前に、会社の短期借入更新について銀行と協議し、必要資金の調達見通しと個人融資の実行条件を文書で確認する。2月審査予定のまま決済するなら、その不確実性に対応できる確定資金が必要となる。

会社の最低現金15を常時守る月次計画、個人の返済源、配当の実行条件、主要顧客と現場体制のいずれかが裏付けられなければ、株式決済を延期して再交渉する。代表交代と株式移転の時期をずらす場合も、権限・責任・銀行手続を先に整える。交渉不成立なら第三者承継等も比較する。運転資金の取り崩しや未承認融資で不足を埋めたことにはしない。

【追加で確認すべき数字】
・直近現金と、税・賞与・設備・借入・配当の支払日を入れた12か月以上の月次表。決済月、2月更新、3~5月、8月回収を重点確認する。
・売掛金年齢表、顧客別入金日、仕掛・部材の案件別内訳、検収遅延、赤字・回収懸念額。季節資金10を月別明細で検証する。
・顧客・工事別の粗利、受注残と契約確度、採用遅延・顧客失注・入金遅延・季節資金増加時の感応度。
・翌期以降の顧問料終了、人件費通年化、維持投資、税金、既存元金返済。初年度だけでなく返済期間全体の余剰。
・個人の家計と予備資金、銀行・売主への全返済日程、実際の配当手取り、株式取得の諸費用、配当可能額。

【数字以外に確認すべき事実】
・最大顧客の更新意思、専務への信頼、契約上の代表者変更時の扱い。
・社長の引継ぎ履行意思、現場責任者の継続意思、採用候補と技能移管の現実性。
・株式・議決権の権利関係、偶発債務や保証、借入契約の協議事項。
・配当の手続・時期・分配可能額、売主分割の利息・担保・支払日・業績悪化時の扱い。法務・税務の専門家と確認する。

【金融機関へ説明する場合の要点】
「増収増益だから返せる」ではなく、会社と個人の二つの資金表で説明する。
会社は2026年営業資金16から、通常運転資金増を除いた基準計画20へつなぎ、今期の元金12・維持投資8で余剰ゼロ、承継費用変更後でも1.5であると示す。原案配当6.75との差5.25を明記する。
そのうえで、最低現金15と季節資金10を守る月次計画、短期12の更新、顧客・採用の未確定事項、価格と返済条件の修正案を示す。会社の追加借入は将来の利息・返済も増やすため、それ自体を配当の持続的な原資としない。
依頼する融資・更新条件、必要時期、判断期限、否決時に決済を延期する条件まで一組で説明する。

【参考:一般的な考え方】
利益と現金の差、借入元金返済の扱い:
日本政策金融公庫「『黒字なのにお金がない』のはなぜ?」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/keiei/support-plus/detail/materials.html?id=444
事業承継で引き継ぐ経営・資産・知的資産の整理:
中小企業庁「事業承継を知る」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html

計算と暫定方針は本ケースの仮定に基づく解答です。参考資料は一般的な枠組みの確認に用い、個別の配当・融資条件が成立する根拠とはしていません。

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