財務諸表ケース【問題】 2026-10-24

財務諸表ケース|PL・BS・CFから企業の財務状態と経営課題を読み解く 財務・会計

財務諸表ケース【問題】 2026-10-24

題材名:北辰設備サービスの事業承継――株式代金と会社の資金繰りは両立するか
ケースID:FIN-2026-10-24-HOKUSHIN
主要論点:会社と後継者個人の資金の区分/会計利益と返済原資/季節資金と最低現金/配当による株式取得借入の返済/社長依存と技能継承/金融機関への説明
※学習用の架空事例です。金額はすべて百万円。税・契約条件は本ケース内の仮定とし、制度一般を示すものではありません。問題編のため結論・解答は掲載しません。

1.背景
地方都市で空調・給排水設備の保守と小規模改修を行う北辰設備サービス。従業員18人、社長67歳。社長が全株式を保有し、専務42歳への承継を希望している。2026年9月期は増収増益だった。

社長は2027年1月に代表を退き、専務へ全株式を36で売却する案を提示した。会社の現預金30を見た専務は「利益も出ているので、取得借入は配当で返せそうだ」と考えている。社長は老後資金として早期の受領を望む一方、取引先との関係が途切れることも心配している。

2.財務状況
貸借対照表(各年9月末)
項目 2025年 2026年
現預金 26 30
売掛金 38 42
仕掛工事・部材 8 10
その他流動資産 8 8
固定資産 50 50
資産合計 130 140
買掛金 20 22
その他流動負債 14 14
短期借入金 12 12
長期借入金 46 42
純資産 38 50
負債・純資産合計 130 140
※借入金は本表では契約別に表示し、長期借入の翌期返済分も長期借入金に含む。

損益計算書(各年9月期)
項目 2025年 2026年
売上高 280 300
売上原価 196 210
売上総利益 84 90
現金支出を伴う販管費 62 64
減価償却費 8 8
営業利益 14 18
支払利息 2 2
税引前利益 12 16
税金費用 3 4
当期純利益 9 12
※現金販管費には社長報酬12を含む。原価に減価償却費は含めていない。

2026年9月期の現預金増減
期首26+営業活動による資金16-設備取得8-借入元金返済4=期末30。
営業資金16は、純利益12+償却8-売掛金増4-仕掛工事・部材増2+買掛金増2。税金支払は費用と同額、その他の資金増減と配当はゼロだった。

3.承継案と今後の資金条件
【会社側】
・2027年9月期の基準計画は、売上・粗利率・償却・利息・税金・通常運転資金残高が2026年と同じ。承継の影響を織り込む前の計画である。
・既存借入は据置期間終了等により、今期の元金返済が年12へ増える。短期借入12の純増減はゼロと仮定する。
・必要な車両・工具の維持更新投資は年8。承継資金とは別に支払う。
・社長報酬12は退任後に停止するが、2027年9月期は10~12月の3、引継ぎ顧問料(1~9月)3、現場管理者の追加人件費(1~9月)4.5を見込む。専務の既存報酬は販管費に含まれ、変更しない。
・社長は退任時の会社からの退職金を求めていない。株式代金36は専務個人から社長個人へ支払う。
・月次では、3~5月に部材先払いと入金のずれにより、平常月に比べ運転資金が最大10増え、8月までに解消する見込み。この増加10は年末残高の基準計画には現れない。
・経営陣は、給与・緊急修理への備えとして現金15を常時確保したい。
・短期借入12の更新審査は2027年2月。追加融資枠は未承認。既存銀行は代表者変更後の取引体制と、承継後12か月の月次資金繰り表を求めている。

【後継者個人側:提示された原案】
・自己資金6+個人借入30で、2027年1月に株式代金36を一括決済する。
・個人借入30は5年・毎年元金均等返済。初年度元金6、利息0.9とする。
・専務は家計と個人の予備資金を考慮し、既存報酬から返済へ充てられる額を年1.5と見積もる。残額は会社の配当を想定している。
・計算上、配当の受取手取りは会社支払額の80%とする。個人利息の税効果は考慮しない。配当は会社の税引後資金から支払い、損益上の費用にはしない。
・計算練習では初年度の元利金全額を対象とする。実際の返済日・配当可能時期・配当手続・分配可能額は未確認であり、実行可否は別途確認を要する。

【交渉余地】
社長は、一括36のほか、決済時24+残額12を3年に分け年4ずつ受け取る案も検討すると話している。ただし未合意であり、利息・担保・支払日・業績悪化時の扱いは決まっていない。銀行も個人借入条件の変更を約束していない。

4.非財務の状況
・売上の45%は保守契約。残る55%は修理・改修工事で、案件ごとの粗利にばらつきがある。
・上位3社で売上の40%。そのうち最大顧客は売上の18%を占め、更新交渉を社長だけが担当してきた。担当者は専務との面談を希望しているが、更新は未確定。
・資格と見積技能を持つ現場責任者2人のうち1人が61歳。若手は4人いるが、単独で見積から完工管理まで担える人はいない。
・追加人件費4.5は採用できることを前提とする。候補者はおらず、採用時期は未定。
・社長の引継ぎ予定は週2日・9か月。顧客紹介、見積判断、緊急時対応の範囲は文書化されていない。
・経理担当者は月次試算表を作成するが、案件別の仕掛残高と採算は四半期ごとの確認にとどまる。売掛金の年齢表も未整備である。

5.判断に迷う論点
黒字・純資産増加・現金30という実績と、元金返済増加・季節資金・配当流出をどう結び付けて見るか。社長退任による費用変化をどこまで確実と見込めるか。株価、支払時期、個人借入、顧客引継ぎ、人材投資のどの条件を、誰と、いつまでに詰めるべきか。会社の資金余力と個人の返済能力を一緒に扱ってよいのか。

6.問い(2問)
問1
2026年実績を出発点に、①基準計画での会社の年間資金余剰(配当前)、②承継に伴う報酬・顧問料・採用費の変更を反映した余剰、③原案の個人返済に必要な会社の年間配当支払額を試算してください。②の税金支払は比較のため4に据え置き、その仮定の限界も挙げてください。そのうえで、現金30、季節運転資金10、最低現金15から見た初年度の配当余力を検討し、年間計算だけでは決められない点を示してください。配当時期と資金収支の順序が不明なため、月次の最低残高を断定しないでください。

問2
あなたが専務の支援者なら、承継原案をどう評価し、実行までにどの条件を整えますか。継続・条件変更・延期などから暫定方針を置き、株式代金の支払設計、個人と会社それぞれの返済計画、人材確保、顧客引継ぎを関連付けて説明してください。社長・専務・会社の銀行・個人融資の銀行に提示する資料と、条件が満たせない場合の対応も示してください。複数案を比較して構いません。

7.追加で確認すべき情報
・直近月の現預金、借入返済日別の明細、税・賞与・投資支払月、配当支払候補日を反映した月次資金繰り。
・季節運転資金10の根拠、検収・入金条件、滞留売掛金、仕掛工事の回収可能性と赤字案件。
・社長報酬停止や顧問料・採用費が、利益と税金支払に与える時期別の影響。
・配当の法務・税務上の実行条件と手取り額、個人借入の返済開始日・条件・必要担保等。
・会社の借入契約、代表者変更時の協議事項、短期借入更新と追加枠の審査見通し。
・株価36の算定根拠、資産・負債の実態、分割支払案の契約条件と個人側の資金計画。
・主要顧客との更新見通し、社長退任後の受注・粗利シナリオ、専務への紹介状況。
・採用の実現性、現場責任者の継続意思、技能移管計画と必要な教育時間。

翌日解答編への引継ぎ
参照日:2026-10-25
ケースID:FIN-2026-10-24-HOKUSHIN
題材名:北辰設備サービスの事業承継――株式代金と会社の資金繰りは両立するか
上記の数値・期間・仮定を共通前提とする。会社と個人の資金を分けて扱い、年間余剰と季節の最低残高を区別する。未確認の融資・配当・顧客更新・採用を、確定事項として補わない。

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