経営判断ケース 2026-08-17
問い合わせは増えているのに、なぜ受注につながらないのか
― マーケティングから営業までの「顧客導線の分断」を見直す
今日は、広告やWeb施策で見込み顧客は増えているのに、商談や受注につながらないケースです。
単に「営業力が弱い」「広告の質が悪い」と片づけず、顧客が知る・興味を持つ・比較する・相談する・決めるまでの流れ全体を見直します。
※以下は、実務で起こりやすい状況を整理した説明用のモデルケースです。
ケース
法人向けの業務支援サービスを提供するA社では、半年ほど前からWebサイトを刷新し、検索広告、セミナー、ホワイトペーパー配布を強化しました。
その結果、月間の問い合わせ件数は以前の約2倍になりました。
ところが、現場では次のような状況が起きています。
- 問い合わせ後に連絡しても「まず資料だけ見たい」と言われる
- 商談になっても「思っていたサービスと少し違う」と言われる
- 比較検討段階で競合へ流れるケースが多い
- 営業担当者ごとに説明内容が異なる
- マーケティング部門は「見込み顧客は増えている」と評価している
- 営業部門は「商談につながる問い合わせが少ない」と感じている
マーケティング施策そのものは一定の成果を出しています。
しかし、問い合わせ件数だけを見ると、どこに問題があるのかが見えません。
何が問題なのか
このケースで疑うべきなのは、広告の量や営業担当者個人の能力だけではありません。
問題は、顧客が最初に受け取る情報と、その後に営業から受ける説明、実際の商品・サービス内容が一致していない可能性です。
例えば、Webサイトでは
「短期間で導入できる」
「すぐに業務改善できる」
と強く訴求している一方、実際には導入前の設定や社内調整が必要であれば、顧客は商談で期待とのズレを感じます。
また、資料請求しただけの顧客と、具体的な導入相談をしたい顧客を同じように営業へ渡していると、営業側の対応効率も下がります。
まず確認したいこと
問い合わせ件数だけではなく、顧客がどこで離脱しているかを確認します。
1. 流入経路別の商談化率
広告、検索、セミナー、紹介、資料請求など、入口ごとに商談化率を確認します。
問い合わせ全体ではなく、どの入口から来た顧客が実際の商談につながっているかを見ることが重要です。
2. 問い合わせ理由
「情報収集」「比較検討」「具体的な課題相談」「導入時期が決まっている」など、問い合わせ時点の温度感を分けます。
3. 最初に顧客へ伝えている価値
広告、Webサイト、営業資料、営業トークで、同じ価値を伝えているか確認します。
部門ごとに違う説明をしていれば、顧客の期待値は途中でずれていきます。
4. 失注理由
「価格が高い」だけで終わらせず、
- 必要性が弱かった
- 導入時期が合わなかった
- 欲しい機能がなかった
- 他社との違いが分からなかった
- 社内決裁が進まなかった
などに分けて確認します。
5. 商談前の情報提供
顧客が商談に入る前に、十分な情報を得られているかも重要です。
基本的な説明だけで商談時間を使っている場合、本来話すべき課題や導入条件の確認まで進めません。
改善の選択肢
選択肢1:問い合わせを一律に営業へ渡さない
問い合わせ内容や検討状況によって、対応方法を分けます。
今すぐ相談したい顧客は営業へ、情報収集段階の顧客には事例や比較資料を継続的に提供するなど、顧客の状況に合わせます。
選択肢2:マーケティングと営業で「良い見込み顧客」の定義を合わせる
問い合わせ件数ではなく、どの状態になれば営業対応すべきかを両部門で決めます。
例えば、
- 課題が明確
- 導入時期がある程度見えている
- 対象業務が自社サービスと合っている
などの条件です。
選択肢3:広告・Web・営業説明を一つのストーリーにする
「何を解決できるのか」「どんな企業・業務に向いているのか」「導入には何が必要なのか」を最初から一貫して伝えます。
良い点だけではなく、導入条件や向いていないケースも明確にすることで、商談後の期待外れを減らせます。
選択肢4:失注情報をマーケティングへ戻す
営業で得られた失注理由を、広告やコンテンツ改善へ反映します。
営業とマーケティングを別々に改善するのではなく、顧客の反応を一つの情報として循環させます。
このケースから見えるポイント
問い合わせ数が増えたこと自体は成果です。
ただし、問い合わせ数を増やす活動と、実際に選ばれる仕組みづくりは別です。
売れる仕組みを考えるときは、
「何件集めたか」
だけではなく、
「どんな顧客が来たか」
「顧客は何を期待して来たか」
「どの段階で離脱したか」
「最終的に選ばれなかった理由は何か」
までつなげて見る必要があります。
マーケティング、営業、商品・サービス、顧客体験を別々の活動として管理するのではなく、顧客から見た一つの流れとして設計することが、受注率を改善する第一歩になります。

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