経営判断ケース 2026-08-26

経営判断ケース|実務シナリオから経営課題と判断のポイントを考える 経営

経営判断ケース 2026-08-26

商談件数を増やす前に、「どの商談に時間を使うか」を変える

ダイドードリンコの営業DX事例から考える、営業活動の質と優先順位

今日は水曜日なので、営業プロセス・営業活動の優先順位をテーマにします。

営業目標が厳しくなると、まず「訪問件数を増やそう」「商談件数を増やそう」と考えがちです。ただ、営業担当者の時間は限られています。特に商談機会そのものが減っている状況では、件数だけを増やそうとしても、重要度の低い案件に時間を使ったり、同じ顧客へ似た提案を繰り返したりして、成果につながらないことがあります。

実際のケース

ダイドードリンコの流通営業本部では、スーパー、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどの流通チャネル向け営業を行っています。

Salesforceの公開事例によると、コロナ禍以降、対面商談の機会減少、オンライン商談への移行、テレワークや直行直帰の増加により、それまで対面で行われていた情報共有が難しくなりました。また、営業管理ではExcelを中心とした複数の帳票が使われており、営業活動の状況をリアルタイムに把握しにくいという課題もあったとされています。

そこで同社は2022年から流通営業本部にSalesforceを導入し、営業活動に関わる情報を一元化しました。

特徴的なのは、単に「商談履歴を入力するCRM」にしたのではなく、

  • 取引先ごと・商品ごとの採用状況を確認する「星取表」
  • 商品の提案数量などを管理する「営業提案シート」
  • 取引先ごとの売上・販促費などの予実を確認する「管理企業シート」

など、次にどこへ、何を提案するかを判断するための情報をまとめたことです。

Salesforceの公開事例では、導入から約3年後の2024年度に営業売上計画を達成し、商談実施率も前年比で約1割増加したとされています。

ただし、ここで重要なのは「Salesforceを入れれば売上が上がる」という話ではありません。公開事例はサービス提供会社側の事例紹介でもあるため、成果との因果関係をそれだけで断定することはできません。

見るべきなのは、営業担当者が限られた時間を何に使うかを決める情報が、以前より揃ったことです。

ここで考えてみましょう

問1

商談時間が限られている場合、営業担当者へ「もっと訪問・商談を増やす」と指示する前に、どの顧客・商品を優先するかを決めるため、最低限どの情報を揃えるべきでしょうか。

問2

CRMやSFAを導入して商談件数が増えたのに、売上や利益が伸びなかった場合、営業担当者の努力不足と判断する前に、どこを確認すべきでしょうか。

解説

問1の答え

最初に揃えたいのは、「売れた実績」だけではなく、「まだ売れていない余地」と「次に動く理由」が分かる情報です。

例えば、最低限次のように見られると営業の優先順位を変えやすくなります。

  • 取引先別・商品別の現在の採用状況
  • 前回提案した内容と結果
  • 次回の提案予定・未実施のアクション
  • 売上だけでなく粗利・販促費などを含めた収益性
  • 取引先の予算・販売計画と自社実績との差

仮にA社では10商品のうち8商品が採用済み、B社では10商品のうち2商品しか採用されていないとします。

A社の売上額だけを見ればA社を優先したくなります。しかし、追加提案余地という意味ではB社の方が大きい可能性があります。

逆に、B社が採用しない理由が価格や商品構成にあり、何度提案しても変わらないなら、単純な「未採用数」だけで優先しても成果は出ません。

したがって、顧客×商品×提案状況×収益性×次のアクションまで見て初めて、営業時間をどこへ配分するか判断できます。

問2の答え

「商談件数が増えたのに売上が伸びない」ときは、件数ではなく商談後の流れがどこで止まっているかを確認します。

例えば、

商談件数:100件 → 120件

まで増えても、

提案化率:70% → 55%
採用率:40% → 28%
平均粗利:20万円 → 15万円

となっていれば、営業活動量は増えても成果は悪化します。

この場合に必要なのは「さらに20件商談を増やすこと」ではなく、

どの段階で失注しているのか → なぜ失注しているのか → どの顧客・商品・担当・条件で差が出ているのか

を確認することです。

また、営業担当者が入力作業に時間を取られ、顧客対応時間が減っているなら、システムそのものの運用設計も見直す必要があります。

何が変わると営業成果につながるのか

このケースのポイントは、CRMを「記録する場所」ではなく、次の営業判断をする場所に変えることです。

営業会議でも、

「今週何件訪問したか」

だけを確認するのではなく、

「どの案件を次に進めるか」
「止まっている理由は何か」
「未採用品で次に狙える商品は何か」
「利益を削ってまで取る案件なのか」

を決める場にすると、システムに入力する意味が営業担当者にも見えやすくなります。

自社で改善するとしたら

優先順位は次の順が考えられます。

1. 営業ステージを定義する
「商談中」だけでまとめず、初回接触、課題確認、提案、条件調整、採用判断など、どこにいるのかを揃えます。

2. 止まっている案件を見えるようにする
例えば「14日以上次アクションがない案件」を自動抽出します。案件数より、止まった案件を減らす方が成果につながる場合があります。

3. 顧客×商品で未開拓余地を見る
既存顧客でも、まだ採用されていない商品・サービスを見つけます。ただし未採用理由も一緒に記録します。

4. 商談件数以外のKPIを見る
商談実施率だけでなく、提案化率、採用率、平均粗利、提案から採用までの日数、予測と実績の差などを確認します。

5. 営業会議を「報告」から「判断」に変える
入力済み情報の読み上げをやめ、その場で次のアクションと担当・期限を決めます。

今日のポイント

営業DXの目的は、営業担当者を管理することでも、商談件数を増やすことでもありません。

限られた営業時間を、成果につながる顧客・商品・案件へ振り向けられる状態を作ることです。

商談件数が増えたかだけを見るのではなく、

どの商談を増やしたのか → その後どこまで進んだのか → 利益につながったのか

まで見ると、営業活動の「量」と「質」を分けて判断できます。

参考情報

  • Salesforce「営業のリアルタイムな計画・実行・情報共有のサイクルを確立。営業売上計画を達成、商談実施率は前年比1割増」
    https://www.salesforce.com/jp/customer-stories/dydo/

  • ダイドードリンコ「お客様志向自主宣言・フォローアップ」
    https://www.dydo.co.jp/faq/declaration/follow-up/2022/

※数値・取り組み内容は公開情報に基づいています。Salesforce導入と業績の因果関係については、公開事例のみから断定していません。

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