経営判断ケース 2026-10-07

経営判断ケース|実務シナリオから経営課題と判断のポイントを考える 経営
経営判断ケース 2026-10-07
テーマ:在庫――季節ギフトの売れ残りを、どこまで値引きするか

【背景】
ファミリーマートは2026年9月8日、夏のお中元ギフトの余剰在庫26品をECで割引販売する企画を発表しました。期間は9月8日~10月5日、最大割引率は58%。数量限定で、ギフト包装・のし対応を行わない条件でした。季節を過ぎたギフトを家庭用の需要につなぐ事例として、在庫処分と通常販売の両立を考えます。
出典:ファミリーマート公式発表(2026年9月8日)
https://www.family.co.jp/sustainability/topics/2026/s20260908.html
※上記は公開情報。以下の会社・数値・販売予測は学習用の架空設定です。実施企業の収益や販売成果を示すものではありません。

【状況】
地方の食品ギフト会社A社に、賞味期限まで60日のギフトセットが300個残っています。通常価格は4,000円、仕入原価は2,200円。仕入代金66万円は支払済みで、返品できません。価格は税抜とし、共通の固定費は比較から除きます。

社長には次の3案があります。
A:自社ECで「季節終了・家庭用限定」と説明し、2,400円で販売。240個が売れる予測。売れた1個につき送料・決済・作業費が合計300円かかる。
B:処分業者へ300個すべてを1個1,500円で一括販売。引き取り費用は業者負担で、追加費用はない。
C:通常価格のまま販売。90個が売れる予測。販売の追加費用は1個300円。
A・Cの残品は期限までに他の販売先を確保できず、1個100円で廃棄する想定です。どの案も代金は30日以内に入金されます。

営業担当は「安売りを見た既存顧客が次のギフト購入を待つかもしれない」と懸念。倉庫担当は「早く在庫を減らし、次の商品の保管場所を空けたい」と主張しています。ECで240個売れる根拠は、過去の小規模セールからの推計にとどまります。

【論点】
今の在庫から回収できる資金、値引きによる将来の利益減少、販売予測の不確かさをどう比較するか。家庭用・期間限定・包装なしという条件に、通常ギフトと異なる購入理由を持たせられるかが焦点です。

【問い:2問】
1.あなたが社長ならA・B・Cのどれを選びますか。各案の今後の手取り額を計算し、AがBを上回る最低販売個数と、判断を変える条件を示してください。
2.今回の処分と次回の発注改善を、どのように設計しますか。販売対象・期間・表示方法、追う指標、次回の発注ルールを具体的に決めてください。

【考える観点】
・支払済みの仕入代金はどの案でも変わらない。これから増減する収入と費用を比べたうえで、最終損失も把握する。
・Aの予測数量は保守的に見積もっても成立するか。出荷能力や追加作業費の見落としはないか。
・既存顧客の買い控えや苦情で失う利益は、AとBの手取り差の範囲に収まるか。
・値引きの理由、賞味期限、包装条件を明示し、贈答用との用途の違いを伝えられるか。
・販売消化率だけでなく、手取り額、通常販売への影響、作業時間を確認する。
・次回は予約受注、少量の初回発注、追加発注の締切を組み合わせ、余剰在庫の発生を減らせるか。

【短い解説】
想定どおりなら、今後の手取りはAが49.8万円〔2,400円×240個-300円×240個-100円×60個〕、Bが45万円、Cが31.2万円です。仕入代金66万円を差し引いた今回の損失は、それぞれ16.2万円、21万円、34.8万円となります。

Aでx個売れると手取りは2,200x-30,000円。Bを上回るには219個以上が必要です。240個という予測には21個の余裕しかなく、Aの優位は4.8万円です。追加費用や将来の利益減少がこの差を超えるなら、Bが合理的になります。

したがってAを選ぶ場合も、短期間の試験販売で需要を確認し、残品を業者へ渡せる期限と条件を先に交渉する方法が考えられます。ただし分割販売でもBと同じ単価になるとは限らず、再見積もりが必要です。今回の回収額を高める判断と、次回の仕入数量を減らす判断をセットで行うことが、このケースの学びです。

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