財務諸表ケース【問題】 2026-10-10

財務諸表ケース|PL・BS・CFから企業の財務状態と経営課題を読み解く 財務・会計

財務諸表ケース【問題】 2026-10-10

題材名:受注増でも現金が減る「青葉精密」の自動化投資
ケースID:FIN-2026-10-10-AOBA
主要論点:利益と資金繰りの差/増収に伴う運転資金/顧客集中と回収条件/自動化と技能継承/短期借入更新と返済能力/金融機関への説明
翌日解答編の参照キー:上記ケースIDと題材名。以下の数値・条件を共通の前提とする。

これは学習用の架空事例です。会社・人物・取引は実在しません。金額は百万円。端数・税務の詳細は簡略化し、実際の制度や融資条件を表すものではありません。

【1.背景】
青葉精密株式会社は、産業機械向けの金属部品を製造する従業員24人の会社です。社長は58歳。少量多品種の加工、短納期対応、熟練者による品質管理を強みとしています。
最大顧客A社から来期の増産要請を受け、社長は自動加工設備の導入を検討しています。ただし、売上は増えているのに現預金は減少。メイン銀行は、設備資金の審査に先立ち、資金繰りと返済原資の説明を求めています。判断時点は2026年10月10日です。

【2.財務状況】
決算期は9月末。2026年9月期は社内の暫定決算です。

損益計算書                     2025年9月期   2026年9月期
売上高                              300          360
売上原価                            216          270
売上総利益                           84           90
販売費及び一般管理費                 66           78
営業利益                             18           12
支払利息                              3            4
税引前利益                           15            8
法人税等                              5            3
当期純利益                           10            5
※減価償却費は原価・販管費に含み、2026年9月期の合計は12。

貸借対照表                     2025年9月末   2026年9月末
現預金                               30           18
売上債権                             45           66
棚卸資産                             35           48
固定資産(帳簿価額)                100          104
資産合計                            210          236

仕入債務                             30           45
その他負債                           10           15
短期借入金                           40           50
長期借入金                           80           71
純資産                               50           55
負債・純資産合計                    210          236
※比較を簡単にするため長期借入金は1年内返済分も含めて表示。
※その他負債は営業に伴う未払費用・未払税金等。配当・増資・資産売却はない。

2026年9月期の補足
・売上債権の増加21、棚卸資産の増加13、仕入債務の増加15、その他負債の増加5。
・固定資産取得の現金支出16、減価償却12。
・短期借入の純増10、長期借入元金返済9。長期借入の新規実行はない。
・上記以外の資金増減・非資金調整はない。未払税金の増減はその他負債に含む。
・既存長期借入の今後12か月の元金返済予定は9。
・短期借入50のうち20は2026年11月末に期限到来、30は2027年4月末。更新は未確定。下記の資金繰り表は11月分20が全額更新される前提。

足元の資金繰り見込み(新設備の導入前)
項目                         2026年10月    11月       12月
売掛金等の回収                    30        32         41
営業上の現金支払                  32        35         33
既存設備の維持更新支出             0         2          0
既存長期借入の元金返済             0.75      0.75       0.75
・10月初めの現預金は18。新規借入・配当等は見込んでいない。
・営業上の支払には仕入、人件費、諸経費、利息、税金を含む。11月には納税4を含む。
・回収見込みは現行の支払条件と請求済み・予定売上に基づく。
・社長は給与や仕入の支払に備え、現預金10を下回らないことを目安にしたいと考えている。これは経営上の希望額であり、契約上の制約ではない。

【3.非財務の状況と投資案】
顧客・受注
・A社の売上構成比は55%。A社向けは既存製品の値上げが進まず、特急対応の外注費が増えている。
・A社は来期の年間発注を現状より20%増やす意向。ただし口頭の見通しであり、最低購入量の約束はない。
・増産品はA社専用仕様。検査後の手直しが発生すると、検収・入金が遅れる。
・A社は新規増産分について支払期間を現行より30日延ばすよう求めている。営業担当は数量を失うことを心配している。
・他の顧客からも引き合いがあるが、試作対応と営業活動に人員を割けていない。

人材・継続性
・段取りと検査条件の調整を担う熟練者2人は、今後2年以内の退職を予定している。
・若手3人を採用したが、独力で段取りを行えるまでに1年以上かかる。
・新設備を入れても検査責任者は必要。教育期間中は熟練者の時間を使う。
・現設備は故障停止が増加。故障時の外注先は限られ、長期停止は主要顧客の納期に影響する。

自動化設備案
・取得・据付総額36を11月に支払う。自己資金6、設備借入30を想定し、借入金は支払時に実行する。
・設備借入は5年、元金均等返済、想定年利3%。元金返済は2027年1月から月0.5。融資承認はまだない。
・12月の増産準備で追加運転資金8が必要となり、12月中に現金が流出する想定。これは導入前資金繰り表には含めていない。その後の回収時期は未確認。
・通常稼働後の年間効果として、外注費・残業代の削減9、追加保守費2を見込む。人員削減はしない。
・新設備の年間減価償却費は6。既存設備は売却せず、既存の減価償却は継続する。
・削減9は現行数量が維持される場合の見積もり。増産分の利益は含めていない。
・稼働開始は2027年1月予定。立上げ3か月の削減効果は通常の半分を見込み、教育・不良・停止による追加負担はまだ見積もれていない。
・代替案として導入延期、工程の一部だけの自動化、外注継続も考えられるが、費用・納期の比較資料はそろっていない。

金融機関
・銀行担当者は「投資効果だけでなく、既存借入も含む返済計画と、A社の発注が減った場合の対応を示してほしい」と話している。
・社長は好調な受注見通しを説明したいが、経理担当者は短期借入更新と回収条件を先に整理すべきだと考えている。

【4.判断に迷う論点】
・売上増と黒字決算を、どこまで投資・返済の根拠にできるか。
・新設備による費用削減と、教育・品質・顧客専用投資の負担をどう評価するか。
・増産受注の確保と回収条件の交渉をどう両立するか。
・投資時の資金手当てと、稼働後の返済能力をどう分けて検討するか。
・設備を急ぐ必要と、短期借入更新が未確定である状況をどう扱うか。

【5.問い(2問)】
問1
2026年9月期に黒字でも現預金が減った理由を、損益・貸借対照表・資金増減から説明してください。投資をしない場合と投資案を実行する場合について、10~12月の月末現預金を試算し、希望最低額10との差を示してください。短期借入20が11月に更新されない場合も比較し、事業継続に関わる資金上の論点を整理してください。

問2
あなたが社長または経営支援者なら、投資実行・条件付き実行・延期・代替案のどれを提案しますか。通常稼働時の投資による損益変化と現金収支を区別し、既存借入を含む返済能力、立上げ、人材、顧客集中を踏まえて提案してください。A社との交渉事項、実行判断の条件、金融機関に提出する資料と説明の順序を具体化してください。未確認の数値は仮定を明示し、基本・下振れの両方を検討してください。

【6.追加で確認すべき情報】
・売上債権の年齢表、A社の検収条件、請求・入金予定日、回収遅延や紛争の有無。
・棚卸資産の内訳、専用品・滞留品の金額、仕掛品の完成予定、評価損の必要性。
・顧客別・製品別の粗利、外注費、段取り時間、不良率。増産品の価格と限界利益。
・A社の確定発注、最低購入量、取消条件、支払条件変更の対象と開始日。
・13週の週次資金繰り、支払日の集中、短期借入更新の審査状況、既存・新規借入の返済表。
・設備の性能保証、教育・保守契約、立上げ費用、故障時の復旧時間、代替案の見積もり。
・削減効果9の算定根拠、数量が下振れした場合の削減額、追加運転資金8の内訳と解消時期。
・技能継承計画、検査責任者の配置、熟練者退職後の生産能力、他顧客への展開可能性。
・今後12か月の納税・維持更新投資・資金需要、担保や保証、融資契約上の条件。

問題編はここまで。結論・解答は記載していません。

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