AI・IT経営ケース 2026-08-25
営業担当の「資料探し」に生成AIを入れると何が変わるか
KDDIの営業準備時間74%削減事例
今日は、生成AIをいきなり「提案書を全部作らせる」のではなく、営業準備の中で最も時間を使っていた作業から狙ったKDDIの実践事例を取り上げます。
■ 実際の課題
KDDIの法人営業では、多数の商材の中から顧客ごとに適した提案を作るため、過去資料の検索・情報収集・整理に大きな時間がかかっていました。
KDDIが業務を調べたところ、営業担当が顧客と直接接している時間は業務全体の約23%でした。また営業準備では、情報収集・整理が約50%、資料作成が約30%、レビューが約20%を占めていました。
そこで、最初から「AIに提案書を丸ごと作らせる」のではなく、第1フェーズとして資料検索を効率化する仕組みを構築しました。
■ 利用した仕組み
主な構成は次の通りです。
- SharePoint Onlineに蓄積された過去の営業資料を事前に取り込む
- GPT-4oでPowerPointの各ページを解析し、スライド画像・要約・キーワードを生成する
- 営業担当が検索語を入力すると、GPT-4o miniが検索プロンプト候補を補完する
- Azure AI Searchが関連するスライド単位で検索する
- 結果画面にスライド画像とAI要約を表示し、関連度の高いページを分かりやすく示す
- Microsoft Entra IDで利用者認証を行う
つまり、生成AI単体ではなく、社内資料、検索、認証を組み合わせて「必要な社内知識へ短時間で到達する」業務フローを作った点がポイントです。
■ 得られた効果
利用者アンケートでは、80%のユーザーが情報収集時間の短縮を実感し、1人あたりの情報収集時間は平均約74%削減されました。
KDDIは次の段階として、資料作成の効率化、サマリー作成、レビューや共有の効率化へ対象を広げています。
ここで考えてみましょう
【問1】
自社の営業業務に生成AIを導入するとしたら、「提案書を自動作成する」ことから始めるべきでしょうか。それとも、資料検索・情報収集など別の工程から始める方がよいでしょうか。
【問2】
仮に情報収集時間を74%削減できても、それだけで営業成果が上がったとは言えません。削減した時間を本当の成果につなげるには、何を変え、何を測る必要があるでしょうか。
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解説
■ 問1の答え
先に見るべきなのは「AIで何ができるか」ではなく、「現在どこに時間が消えているか」です。
KDDIでは、営業準備のうち情報収集・整理に約50%の時間が使われていることを確認してから、最初の対象を資料検索に絞りました。
ここは重要です。提案書の完全自動生成は効果が大きそうに見えますが、誤った提案、表現の不整合、古い情報の混入など確認負荷も大きくなります。一方、過去資料の検索・要約支援なら、人が最終判断を残したまま時間を減らしやすい領域です。
したがって、自社でもまず「検索」「転記」「要約」「照合作業」「定型文書作成」など、時間が多く、判断リスクが比較的低い工程を特定するのが現実的です。
■ 問2の答え
74%という時間削減は、それだけでは経営成果ではありません。
削減した時間がそのまま空き時間になれば、コスト削減効果しか生まれません。営業成果へつなげるには、その時間を顧客との接点、提案の追加検討、案件フォロー、クロスセルなどに再配分する必要があります。
例えば、次の変化まで追うと「AI導入が事業成果につながったか」が見えます。
・顧客接触時間が何%増えたか
・提案準備のリードタイムが何日短くなったか
・1人あたりの提案件数が増えたか
・商談から提案までの時間が短くなったか
・受注率やクロスセル率が変わったか
・レビュー工数や差し戻し件数が減ったか
もし資料検索時間だけ74%減ったのに、顧客接触時間も提案件数も変わっていなければ、AIの効果を業務成果へ変換できていない可能性があります。
逆に、資料検索を短縮した結果、顧客との対話時間が増え、提案サイクルが速くなり、案件数や受注率まで改善すれば、初めて「AI導入による営業プロセス改善」と評価できます。
■ この事例から参考になる点
生成AI導入で重要なのは、最初から大きな自動化を狙うことではなく、
「業務を分解する → 時間のかかる工程を特定する → AIを当てる → 時間削減を測る → 削減した時間を成果へ再配分する → 売上・案件・顧客接点まで追う」
という順番です。
KDDIの事例は、AIそのものよりも、業務分析から始めている点が参考になります。
参考情報
・Microsoft Customer Stories(2025年3月25日)
KDDI が生成 AI 活用を加速、「ミドル業務革新」で営業準備時間を約74%削減
https://www.microsoft.com/ja-jp/customers/story/22859-kddi-corporation-azure
・KDDI 法人向け Azure OpenAI Service
https://biz.kddi.com/service/ms-azure/open-ai/
※数値・利用技術・業務フローは上記公開情報に基づいて整理しています。

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